よい街コラム

ある山口市の不動産会社

 以前お世話になった山口県の不動産業者の中に、防長不動産という会社があります。山口市、防府市を中心に住宅団地を手掛けられている会社でそこの池田社長様は街づくりに本当に熱心で、色々研究され、また良い街づくりを実践されています。
 最初お会いした時は、「不動産業者さんの中にもこのような考えで取り組んでいる方見えるんだ」とその考え方に非常に感銘を受けました。私の前職の会社など住宅メーカーが協会員となっているまちなみ推進にも投資されてセミナーにも通われていたようです。過日連絡しますと、忙しくて忙しくてホームページを触る暇ないんですよ、とおっしゃっていました。
 良い街並みを作ろうとするとどうしてもお金と労力がかかります。私も池田社長様と同じようにジレンマがあり、時に心折れそうになります。それでも「住んでもらう方々の為に」と言い聞かせ、全く足元にも及ばないですが、池田社長様のように、お客様に喜ばれるような街を作りたいと考えます。また時間があれば赴き、取り組み等お伺いできれば、と考えています。

風水

 そもそも占いは、中国の作者不詳の「易経」から始まったと言われています。風水はもともと風害・水害から逃れるために、先祖の墓をどこに据えるかの墓相に始まり、家をどこに建てるかの地相、そして家の間取りの家相に至ったと聞いています。
京都御所は東に清流(鴨川)が流れ 南には広い平地、西には道路、北には山という地相でいう最良の土地に建てられたとされています。そして鬼門除けとして高野山と延暦寺の建設。
 でも本当にそうでしょうか?日本と中国では、風向きが違います。中国では冬は東北の風が強く、首都長安から東北の方角の北方民族と戦うために万里の長城方面に戦いに行き、よく戦死して帰らぬ人となり、その方角を鬼門としました。確かに、かまどがあれば、煙が家の中に入ってきたり、トイレがあれば、臭いが入ってきます。
 でも三重では主に夏は南南東、冬は北北西の風が吹きます。本来のそもそもなんでそこがトイレ等はいけないのかという家相の原点に帰れば、この方角が鬼門・裏鬼門ではないでしょうか? 
 また階段が家の真ん中では駄目だとも言われます。昔は大黒柱といわれる柱を家の真ん中にもってきて家を支えていたので、階段が真ん中になると大黒柱がズレるのでそう言われたようです。現在では柱と壁のバランスで家を支えるので今となってはナンセンスといえます。
 また鬼門の方角に家を凹ませる(欠け)とダメだといわれます。確かに凹ませると風がそこに集まり家に負荷が掛かります。現在においても一理あるのかなと思います。              
 勝手な考えですが、西に山、南に山、東に広い平地、北に平地が最良のように考えます。そう考えると伊勢や松阪は紀伊山地に囲まれたいい土地ではないでしょうか?
 数年前九州で洪水被害があった福岡の朝倉市を見てきました。西からの雲の流れを遮る山々はさほど高いようには見えませんでしたが、やはり西に平野が広がり、線状降水帯を招きやすいのかなと感じました。

ちょっとした工夫で快適な住空間を

家づくりでは、皆さん夢と現実を交錯させながら、色々と考えられます。
アメリカでは、そのほとんどが分譲(建売)住宅ですので、アメリカの設計士の自慢話は
「私はこの同じ間取りの家を何千軒建てました」 が一般的なようです。
確かにニューヨークなどの中心市街地でも住宅街の1区画当たりの面積は三重県の平均1区画の約3倍程度ありますが建売なので、同じような家が並びます。与えられた空間でいかに自分たち家族が個性を活かして住むかという考え方なのでしょうね。
しかも管理が行き届いています。きっと街並み保全のための管理組合みたいな組織があり、資産価値・街並みの保全のために管理されているのだろうと考えます。

美しい街並みを維持していくためには…

 前職では分譲(建売)住宅をたくさん手掛けさせて頂きました。多い時には年間100棟近くやっていたように思います。販売をする側から考えると、どうしても販売時、つまり完成時に一番良く見せようとします。過去に手掛けた街を、車を数時間走らせ見に行ってきました。確かに街並みは整い、他の団地と比較すると断然よく見えますが、住民の皆様の立場で考えると、ちょっとやりすぎた感があり、維持管理が大変だなぁと反省。本当は垣根に心に思う樹木植えたかったけど費用面でやむなし安価な木を植えました。結果見に行くと繁って繁って剪定が大変です。
さほど管理しなくても、自然と良くなっていく街づくりが日本には一番求められ、追及していかなければと考えています。

「家」と「外構」をトータルで考える

 どうしても家づくりの打合せは、家そのものに偏りがちです。そしてご契約後も色々したい事が出てきて、追加工事が発生します。結果外構予算がどんどん削られてその削られた予算で出来上がった外構は、あまり見栄えのするものではありません。
 家と外構の重点度合いは9対1くらいになりがちです。家と外構が調和してこそ、いい家づくりとなり、ひいては良い街並み形成につながると考えます。
40年程度経過したまぁ高級住宅街といわれる団地に行くと、建築当初外構に力を注いだことがよくわかります。
高級なタイル張りの門やおしゃれなフェンス…でもなぜか古臭く見えてしまうのは、タイルやフェンスなどが今の時代から見れば陳腐なものだからでしょう。しかしたまに「おっ」と思える感じのいいお宅があります。そのお宅の共通点は解放感です。あまり門や塀などがなく開放的で緑のある外構が一層目を引かせます。
 そういった流行にとらわれず、また高級な部材を使わず、自然を生かした外構が年月が経過すると、良い外構になる、といえるのではないでしょうか。